糸島自然研究会 7月例会報告 樫原湿原―佐賀県七山村―
清水 和人
 平成16年7月11日(日)晴れ。8年前の樫原湿原野外観察会は貸切りバスを利用したが、今回はJR福吉駅南口広場に集合。6台の乗用車に分乗し午前9時50分頃出発した。(参加者18名)古賀氏の先導で「まむし湯」を過ぎ白木峠→藤川→滝川→観音の滝駐車所まで遅れる車もなく順調にきた。ここで10分程度の休憩をとり樫原湿原へ向かった。湿原に到着したのが10時10分頃。車は溜め池の側の駐車場にとめ、200m程歩き「樫原県自然環境保全地域特別地区」と書かれた案内板の前までやって来た。突然、監視員の大きな声が聞こえてくる。「歩くのはアスファルトの上と木道だけです。」その理由は、道路脇の土手にも貴重な植物が生育している事もあると言うことだ。 10年ほど前から、湿原の監視をしている叔父さんは笑顔で私達に「マムシに噛まれんように注意して!」と言う。皆は「ハイ」と言って、道路脇の湿原を見ながら人工湿地へと進んで行った。
 観察した順に主な植物を書くと ○監視員詰所前の湿原で見たもの7種
・ウツボグサ=山野に生える、茎は4稜草丈約3 0cm。 6月〜7月上旬うす紫色の花。
・マアザミ==草丈50〜1 0 0cm、湿地に生え葉は両面無毛。サワアザミとも言う。
・カキラン=草丈5 0cm前後、湿地に生え葉は狭卵形。7月上旬頃樅黄色の花を開く
・ワレモコウ=草丈70〜1 0 0 cm、葉は有柄無毛、秋に暗紅紫の花弁のない花を開く
・コバノギボウシ=湿地に生え、草丈4 0 cll前後、7月下旬淡紫色の花。葉は長楕円形
・シズイ=浅い池に生える、茎は3稜で小穂はとがり黄褐色。カヤツリグサ科。
・ヌマトラノオ=湿地に生え、草丈6 0cm前後、7〜8月上旬に白色の花をつける。



 次に木道歩き、第1人工湿地から第4人工湿地へと観察していく。
途中、監視員がセットした望遠カメラで水に浮く黄色の花をつけた
小さなヒメタヌキモを観察した。では第1人工湿地から
観察したものを書くと。
 (周辺の草原に生える植物も含む)。

・ミツガシワ=葉は3枚の小葉、質は厚い。4月下旬花茎の先に淡紫色の花をつける。
・ヒツジグサ=池沼に生える水草。葉は水に浮き、春〜11月上旬迄白い花をつける。
・ジュンサイ=池に生える水草、葉は水面に浮き7月一杯紫紅色の小花をつける。
・モウセンゴケ=食虫植物。花期7月〜8月、1 5 cm位の花茎の先に白い小花をつける
・オトギリソウ=山野の湿地に生え、草丈5 0cm位。葉は対生し、油点が散在する。
・イ=湿地に生え節間は短く茎は円柱形で高さ1 0 0 cm以内。夏、緑褐色の花をつける
・ユウスゲ=山地の草原に生える。草丈1. 5m位。7月中旬から淡黄色の花をつける。
・チゴザサ=草丈1m前後で湿地や水辺に生え、ササに似た葉をつける。

 第2人工湿地は水が一面に溜まり、ハッチョウトンボの♂と♀、モノサシトンボ、キイトトンボを見た。この湿地で見たものは(第1人工湿地で観察したのも以外で)
・ウマノアシガタ=茎、葉共に有毛。初夏、分枝した先端に1個づつ黄色い花をつける
・ヒメミクリ=浅い水中に生え、葉は線形で雄花と雌花があり白緑色の花をつける。
・オトコヨモギ=山野に生える草丈1m前後茎は殆ど無毛。葉はへら形先半分に鋸歯。
・コオニユリ=草原に生え、7月下旬頃茎の先に斜め下を向いた花をつける。
・ヒメタヌキモ=浅い池の水中に生える食虫植物。小さい少数の淡黄色の花をつける。
・ウナギズル=水辺に生え草丈30cm位。茎は曲がり稜に沿って刺が逆向きに生える。
・ヒメオトギリ=湿地に生え、草丈40cm位。8月中旬頃から橙黄色の花をつける。
・カンガレイ=溜め池に生え草丈50cm以上で茎は3稜、葉は退化して見えない。

 第3人工湿地から第4人工湿地へ向かう。この湿地には・ショウブ・コガマ等が生えているが、7月上旬は花を見ることが出来ない。そのため皆は素通りしていくが、反対側の湿原には ・ヒツジグサ・ジュンサイ・ヒシ等が水面に浮かび、水辺では・ニガナ・アカバナ・トラノオ・ミゾソバ・ツユクサ・アマドコロ・ムラサキツユクサ・スイ力ズラ・サワヒヨドリ等を見た。
 湿原の南西を回り木の橋を渡り湿原の緑を通って監視員詰所がある駐車場へと戻ってきた。湿った木道の両側では、日陰に育つシダ類やコケ類を見た。
・ヒメシダ=草丈30〜5 0cm位の多年草。湿地に群生し葉は立つ。(オシダ科)
・ミズゴケ=湿原や腐植土上に群生し、植物体は褐色を帯びた淡緑色。
その他、倒木や露出した岩盤には・マメヅタや・ハイゴケ等が生えていた。日陰ではあるが、道路脇には・チヂミザサ・ゼンマイ・シシガシラ・ノダケ・キッコウハグマ・ミツバアケビ等、沢山の植物を見た。

 12時10分頃、車を止めていた溜め池の駐車場へと向かう。
途中湿原の先端部分で雑木や松で覆われた水溜まりに、
今開いたばかりの・ヒツジグサを見た。少し進むと、日当たりのよい土手に
ランの花によく似た・オオバノトンボソウを見た。
帰り道200〜300mの間に珍しいものを観察出来たことで、
皆は満足し観音の滝へ向かった。 観音の滝では、滝を眺めながら
のんびり昼食をとった。
古賀氏から滝をバックに集合写真を撮って頂き駐車場へ戻る。
午後2時ころ前原方面へ向かった。(終わり)


 参考文献/・牧野日本植物図鑑、・樫原湿原(佐賀県保健環境部環境保全課1991年出版)



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