糸島自然研究会 2009年3月例会報告 [野外観察]可也山(糸島富士)(3月8日)

瀬知 従子
 3月8日(日)前日の天気予報では午後面が降り出す予定であった。私はそのつもりで雨具の準備をして集合地、引津のニツ橋(旧JA跡地)に少し早くと思って9時40分頃到着した。その時点ですでに20人近くの参加者が待ってある。その後自家用車が続々と集まって、何と受付・点呼時には44名という多勢になり嬉しい悲鳴である。これは事故無く進行しなければと気を引き締めた。およそ10名単位で4つの班に別れ出発。
 可也山は、標高365mで1年365日と覚えやすい数値である。死火山で、見る場所によっては将に富士山そのもので、実に美しく見事である。高祖山の裾、高来寺からや染井当たりからの眺めが良い。可也山が糸島富士とか小富士と呼ばれる所以が分かる。ところがこれも加布里側とか火山(ひやま)側からは台形にしか見えない。これは山の中下部が糸島型花花崗岩類で上部を玄武岩が被っているためだそうである。芥屋の大門の玄武岩と共にかつての火山地帯だそうである。
 師吉側の登山道に石切り揚が見られるが、これは花崗岩類が石材として利用されていたなごりで、日光東照宮には、此処から切り出され、奉納された大鳥居があり、黒田筑前守藤原長政の名が記されているのが見られる。
 JA跡地から北へ歩く道路の脇にはホトケノザの紅紫色が絨毯のように敷き詰められ美しい。次には、ツクシが見事に並んでいる。そこはハウスの縁で明らかに除草剤が撒かれた後が見える。ツクシは皮肉にもこんな場所を好んで生えるので怖い。
 山に入るとき頂上とは反対側に、左に折れる。なぜ?って不思議に思ったら、尾根伝いに登るということで納得できた。しぱらくは車も通りそうな広くてなだらかなスギやヒノキの木立の暗い道を歩く。10分ほど歩いたろうか、黄色い紐印から右に折れて、それからは木の葉の絨毯というか腐葉土いっぱいの山道に入る。木の根っこや倒木、ぼろぼろの枯れ木などよそ見の出来ない登山で足元ばかり注意して歩く。スダジイの実、ノグルミの実、ツバキの実(かたいい、カラスザンショウの実、ネズミモチの実、時々小鳥が啄ばみながら落としたらしい真赤な若いアオキの実も落ちている。アオキはそんな実から芽生えたらしい若木があちらこちらに数多く芽生え、後数日で花開くであろう蕾がついている。これが開くと雄花と雌花が比較できるのにと残念である。険しい坂道で思わず左右に手を伸ばしたくなるところに棘いっぱいの木、多分ハリギリであろう。もみしの手を広げたような手のひら大の落ち葉がある。棘のある木といえばカラスザンショウもある。頂上にそびえていた裸の枝っぶりが、もしかしたらカラスザンショウだったかも知れない。葉が出た段階でもう一度確かめたい。
 ハマピワ、トベラ、ハマヒサカキもたびたぴ出会う。ハマヒサカキは、今、花時で独特の臭気を放つ。「これカヤかな?」「モミじゃない?」など問答してはカヤの実の歌を口ずさんだり、モミの木の歌を口ずさんだりしていると、三宅さんがイヌガヤだと固定して下さった。木肌の剥がれた状態が丁度鹿の子の背中の模様に似ていることから名づけられたというカゴノキ(鹿子の木)も度々見られた。
 頂上まで後10分ぐらいが厳しい登坂だったが無事12時には到達できた。最後の班の数名が最後の最後に迷われて突然藪こぎして現れたのにはびっくりした。お年を召された方3名を除いて41名が頂上に上がった。3名は早めに下山され帰路に着かれるとケータイに入る。ニワトコの新芽を眺めながら「天ぷらにおいしいんだよねえ」とお弁当にする。
 師吉側に降りたい人が14名おられたので大塚さんが会の責任者として同伴され15名となる。登りと同じ道を下山するのは26名となる。予定より早く1時には出発した。下山も結構厳しく注意が必要であった。登りでは気づかなかった、朽ちた古木にキクラゲを見つけたりユズリハの小さいヒメユズリハを見つけた。そろそろ林道に出るのかなと思うころ、左にそれて蜜柑園近くに出ることになった。その時、ウグイスの初鳴きが!まだまだ練習中であったが皆さん大喜び。そこから浄水池らしきところから下っていったのであるが、そこから車道に出るまでシロバナタンポポばかり目に付く。近年シロバナタンポポが減少していると思っていただけに驚いた。可也山の反対側の小金丸地区にも以前(30〜40年前)には沢山のシロバナタンポポが目に付いたのに今では探すくらいしかない。
 今日は登山中心のようになって草花の観察があまり出来なかったので、蜜柑園から下っての帰り道努めて草花に目をやった。オオイヌノフグリやタチイヌノフグリは見られたがフラサバソウが見つからない。カラスノエンドウとカスマグサは見つかったがスズメノエンドウが見つからない。3つ揃うと楽しいのにと会話しながら帰る。
 JA跡地に着いたときは2時、早い人はもう解散して帰られていた。師吉側から4名タクシーで戻られて最後の解散となる。今日の天気は予報変更だったとかで午後も快晴で、良き自然観察日和であった。

見分けの目安……葉の大きさ・形、花、まきひげの数 カスマグサはカラスのカとスズメのスの間(マ)でカスマグサ


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