糸島自然研究会
2010年11月例会 福岡市立今宿野外センター内の植物観察
(11月14日)

瀬知
11月14日(日)数日前からの黄砂に展望を心配しながら当日を迎えたが、気温もやや高めで絶好の晴天である。野外センター10時半集合、しかし乗り合いバスからの降車客はない。自家用車利用の方や徒歩で来られた方、合計9名の参加である。駐車場の生垣に黄色いヤマノイモの葉が目立つ。屈んでみると狙い通りムカゴが転がっている。待つ間にムカゴご飯二人分の収穫が出来た。
 10時半からセンターの中の紅葉を愛でながら歩く。今日は、オリエンテーリングが開かれて子供連れも多くにぎわっている。時々挨拶を交わしたり体を交わして避け合ったりする場面もあった。段々茶畑からの高祖山登山口から登りに入る。4日前に来た時はぽつぽつとわずかに咲いていた茶花が、今日は盛りとなっている。手元に寄せて嗅ぐと優しい微かな香りが心地よい。その右手にはシロダモの雄株と雌株が都合よくサンプルの様に並んでいる。花はいずれも黄褐色であるが雑株のほうが花数多く感しる。雌花は昨年からの赤い実も同時に着けている。
 右側の谷にはちろちろとわずかな流れがある雑木の中を登る。キジノオシダとヤマソテツ、どう連うか図鑑とにらめっこして考える。胞子葉が良く似ている。栄養葉に違いがあって、艶やかなほうがキジノオシダ、ざらつきを感しる葉がヤマソテツのようだと同定した。4日前まで気づかなかったマムシグサの実が今日は赤く色付いているのに驚く。イヌツゲに大小いっぱいこふかついている。実?虫こぶ?これは、イヌツゲタマバエが作った虫えいでイヌツゲメタマフシというのだそうだ(インターネットによる)。虫えいとは虫が植物に卵を産みつけその中で成長しやがて成虫になって外に出て行く。植物によって、それを棲家にする虫は決まっている。
 登るにつれ色々な植物に出会い歩が止まる。イズセンリョウの可愛い白い実、フユハナワラビの上品な薄緑の花、と思っていたら、なんとこれはオオハナワラビだそうである。茎に毛が生えていることと、葉先が尖っていることで区別できると言うことを松原さんが教えてくださった。
  「わあ!きれい、これきのこ?いちごかと思った。」振り返るとフユイチゴの茎の根元に真っ赤な径1.5cmほどの・・・良く見るとキノコに間違いない。
 帰ってキノコ図鑑やインターネットで調べたところヒイロガサのようである。可食となっている。しかしあまりに美しい赤に、食するには怖い気がする。キノコの固定をするとき、裏のひだの様子・柄の表面の様子・柄につばのあるなし・傷つけて変色するか否か・触ってべたつくか等、観点についてあまりにも自分が無知であった。写真に取っただけでは分からない。偶然であろうか、フユイチゴの根元にあるヒイロガサを、数10センチ離れたところで又見つけた。偶然であろうか。フユイチゴとヒイロガサの関係は何もないのか?マツタケがマツ林を好むように。
 165m地点位のところは、樹木がとぎれて頭上に青空が見えて陽光がさし、種々の花々が見られる。ノコンギクの花盛り、ヤブムラサキの意外な大木にはわずかにムラサキの実がなっている。葉は確かにふわっとして綿毛を感じる。ヌマダイコンの白い花、サラシナショウウマのびんブラシに似た素敵な白い花、わずかに残っているヤマハッカの紫色の花はもう長く伸びたガクばかりが目立つ。シュウブンソウももう盛りを過ぎている。すでに秋分の日も過ぎているしと言う声。 どなたかサラシナショウマを解説してくださった。若菜は食することが出来る、根は薬になるそうな。
 大きいシダが目立つ。ゼンフイの色合いや形に似ているが硬くてしっかりしている。イワガネゼンマイか、イワガネソウかということで調べる。葉脈が葉の縁まで達していない、葉先が急には綿くなっていない等からイワガネソウと固定。故若宮先生の言葉を若宮ハ恵さんが「合するゼンフイ、合せんソウ」と思い出させてくださった。葉脈が鋸歯まで達してるか否かのことである。
 みんなの手や服に引っ付き虫がいっぱいくっ付いている。犯人は何ものか?いつもの草の実(イノコヅチ・センダングサ)とはちょっと違う。素手にくっ付いて処置なし。べたべたするのである。それは、ヌマダイコンの花殻であった。
 ゆっくり観察しながら登って来たので、もう11時45分になった。植物にもいっぱい出会えたし、能古見台方面への自然観察路へ登るのを中止して引き返しセンターの紅葉狩りをすることにした。
 下りでも更に新しい発見が出来た。コボタンヅル・カエデドコロ。足元にノグルミのトゲのある実、見上げるとカラスザンショウの葉にそっくりの菜であった。ほかに5葉でヤブガラシに似ているが厚く硬めの小型の葉を持つツタの種類、更にそれにトゲまでついている。花は?実は?季節を通して観察したら分かるだろうか。課題である。 岩に絡み付いている苔と混じって見覚えのある植物、オオサンショウソウと思われる。
 12時10分にセンターの広場に着く。そこにはメリケンカルカヤ、ブタナ・ヤクシソウがみんなを待ってくれていたような、ほっとする花々である。 芝生の上で昼食とする。はるか見下ろす北側の海に能古島、志賀島が見える。ヨットも5・6艘浮かんでいる。心配した黄砂も今日は邪魔しなかった。
 さまざまな紅葉は勿論、ナンキンハゼの殻が落ちて白い実となり、赤や黄色、紫がかった葉との調和が絵を観る様だ。今日の1日が素晴らしいものになった。13時半、車・徒歩とそれぞれ帰途に着いた。


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