WEB版伊都楽紙。 「WEB版伊都楽紙」は、西日本新聞のエルルに3週間おきに掲載されている「伊都楽紙」の一部を
再構成し、いとぐらのコンテンツの一つとして再掲しております。

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バックナンバー(2004年分)これまでの「ぶらみゅ」です。
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西日本新聞沿線版として早良区・西区・前原市・糸島郡のエリアを対象として毎週土曜日に発行されています。
発行:西日本新聞社総合プロジェクト室
〒810-8721 福岡市中央区天神1-4-1

  陶ギャラリー「ひょうたん島」 2005年12月17日(土)
 
◎底に穴を開けたら実用的
オープンテラスのギャラリーに洗面ボールや食器などを展示する丸田博人さん(56歳=前原市高田)。今年の夏作り始めたというギャラリーで陶芸やヨットの話を聞いた。
丸田さん。学生のころからヨットに親しむ丸田さんは31歳から2年半をかけ、ヨットで太平洋を一周した。アメリカ、オーストラリア、ニューカレドニアから小笠原諸島。途中サンフランシスコで通った市民講座が陶芸との運命的な出合いに。帰国後、会社勤めをしながら本格的に陶芸を始めた。
陶芸歴は10年。作品は洗面ボール、照明シェード、植木鉢など一風変わったものだ。住宅関連の仕事をした丸田さんはインテリアとしての陶芸に着目し、「人のしていないことを」のポリシーから制作アイディアが浮かぶ。信楽の土を使った洗面ボールは織部、黄瀬戸、青緑釉の釉薬で緑、黄、茶色などを展開、手洗いが楽しくなりそうだ。
白萩の釉薬をかけたコーヒーカップ、第一印象は「軽い」。シニア仕様住宅に関わったころの「軽くて、持ちやすく」と言う声をヒントにした。飲み口がぽてっと厚めのせいか印象は柔らかいが全体は肉薄。「シニア向けのものは一般の人も使いやすい」と丸田さんは言う。
1999年福岡県美術展、2000年西日本陶芸美術展に入選の経歴を持つ丸田さんだが、「受賞作品でも、大きな物は使いにくい。だけど底に穴を開ければ洗面ボール」「陶芸の場合、美術的であることと共に実用的であることも大切」と言う。現在、庭を展示スペースに改造中。植物を楽しみながら作品を見てほしいと話す。緑に囲まれたオープンギャラリーの完成が楽しみだ。
前原市高田171-8 322-9607 営業日時は土・日・祝祭日10:00〜17:00。訪問前に電話連絡を。洗面ボール(縁直径30cm)18,000円〜、コーヒーカップは一律1,200円、角皿1,800円〜。http://q-cera.com/
 


  「ふぁんふぁん」 2005年11月26日(土)
 
◎これからは男性も古布で楽しむ
古布は渋くて味わい深いから、現代にはない素朴さを大切にデザインする。古布の創作服を手がける間富貴子さん(57歳)=前原市=の店「ふぁんふぁん」は創業22年目。長年親しまれた旧商店街から北新地に移転した。
間さん。母が洋裁をやっていたので、子どものときから縫い物が大好きで、店を始めた。大島の古布をパッチワークにしたり、帯地からバッグを作ったり、留袖をパーティドレスに仕立てたり、アイデアがあふれて忙しいのが悩み。着物は季節の決まりがあるが、洋服にリフォームすれば一年中着ることが出来る。留袖もドレスにリフォ−ムすれば、一人で着れるし、持ち運びも簡単になると喜ばれている。手作りには既製品にない味がある。 形見の着物を洋服やバッグに直す人が多い。着物のまま、持ってきてもらえれば、デザインはお客様と一緒になって知恵を絞る。鯉のぼりの幟を染め直してブラウスに仕上げたこともあるので、派手な着物でも相談して欲しいということ。間さんは「男性が古布で作ったシャツや作務衣を着るとおしゃれ」だと思うので、男性用も手がけてみたいということ。古布の他に白いレースをオリジナル色に染めてバッグも作る。レースは見かけによらず丈夫なので、染め替えも出来る。染め替えは無料でやってくださるそうで、使い慣れたバッグも新しい色に染まると気分がリフレッシュする。レースのバッグは夏だけでなく冬も使える。冬用は濃い色で染めるので、見に来てくださいとのことです。そのほか、店内には工房「遊」の陶器や古道具なども展示しています。
前原市北1-2-7 322-2359 10時〜19時 不定休
和風のお財布1,500円〜 ブラウス15,000円〜 レースバッグ3,800円〜 古布バッグ5,000円〜
 


 フェルト工房&ギャラリー「Corridale」 2005年10月15日(土)
 
◎二人だから続く 自由気ままに楽しく
引津湾を眺める工房兼ギャラリー志摩町芥屋のエメラルドパークに今年7月オープンした工房兼ギャラリー「Corridale(コリデール)」を訪ねました。引津湾を一望する部屋にはフェルトのマフラーやルームシューズ、ポーチなどの作品が並びます。
沖永さん、泉田さん。作家は福岡市内に住む沖永眉美さんと泉田公子さん。ウールを扱い始めて10年以上になる2人は、日常生活から離れ、週末は工房で制作に没頭します。「フェルト制作は日常を忘れるリフレッシュの時間。週末があるから仕事も頑張れる」と泉田さんは言います。
フェルトは原毛に石けんを溶いた湯をかけ擦り続けると、繊維が絡まりあい縮んでできます。孤独になりがちな作業も2人いれば笑いが絶えません。手織り教室で知り合った2人は、作品の出来を褒めたりアドバイスし合う、「制作においてお互いなくてはならない存在」と沖永さんは言います。
◎ウールのシーズン、志摩と今泉で展示会
今月16日までは志摩のアートイベント「アートモコ2005」に出品(問い合わせ:スペースサスケ090-9659-6650)、11月15日から20日までは福岡市今泉のカフェ・ド・アッシュ(732-3167)で二人展の予定です。年に1度の二人展は今年で4回目。今回のテーマは「ナチュラル」。原毛の色合いを生かした小物類や帽子、クッション、ソフトラグなどが並ぶ予定です。
温もりが恋しくなる季節。自分にご褒美、誰かへのプレゼントにウール100%のフェルトはいかが?(甲)
志摩町岐志1513 エメラルドパーク内「エメラルドビラ5」202 営業は毎週日曜日の11-17時。
問い合わせ 090-1925-2911(沖永)、 090-3799-2394(泉田)留守の場合があるので、来訪時は電話連絡を。コースター550円、ルームシューズ4,000円、マフラー5,000円〜など。
 


  「木工小屋KEYAKI」 2005年9月3日(土)
 
◎「100年かけて育った木は100年使える・・・」56歳、木工に
志摩町久家の「木工小屋KEYAKI」の石黒宣昭さん(62歳)を訪ねました。「サラリーマンだけで終わるのはつまらない」と勤務先の会社を56歳で早期退職し、木工の道へ。きっかけは「100年かけて育った木は100年使える家具になりうる、100年使える家具を作ってこそ意味がある」という言葉でした。
石黒さん。飛騨高山の工芸村「オークヴィレッジ」代表の稲本正さんがテレビで話した一言だそうです。彼への手紙を投函すると後日返信が・・・手紙は現在ギャラリーに飾られています。
手作りギャラリーには木工作品、妻のキルト、陶芸家の器「身近な材で素朴な形の丈夫な家具を作る」がモットー。使用する材はクス、ケヤキ、タモ、クルミ、ナラなどです。木工歴6年の石黒さんが作る座卓、椅子、ドア、額縁などは、存在感があって押し付けがましさがない・・・作者の雰囲気と似ているようです。
木工に十分なスペースが取れる田舎に住みたいと、4年前、志摩町に移住し、昨年11月には作品を置くギャラリー(3坪)を自宅前に完成させました。外壁を漆喰(しっくい)で塗ったギャラリーに、椅子や座卓などの木工作品の傍ら、妻・芳枝さんのパッチワークキルトや、久家の陶工房「森の工房」の器を展示します。木工の魅力をたずねると「イメージを具現化していくことが面白い、でもなかなか思い通りにならない」。自分に課しているのは「幅広い技術、知識が必要な『箱物』の経験を重ねること」と意欲に溢れます。(甲)
志摩町久家471-1 328-3868 座卓50,000円〜、椅子30,000円〜、額縁2500円〜など。
パッチワークキルト、陶器も販売。ギャラリーの営業は金・土・日曜日の10-17時。
 


  1600年以上続く日本の伝統工芸「日本刺繍」 2005年8月13日(土)
 
◎一針ひと針 丹念に息を吹き込み続ける刺繍家親子
前原に、刺繍家親子がいると聞いて自宅を訪ねました。そこでは、一針ひと針、黙々と布に針を刺している姿が見られました。変わった形の刺繍台に布が張ってあり、そこには、今にも飛び出してきそうな動物の絵がありました。
田中さん親子。父・田中幾重さん(76)と息子・田中幸さん(47)そしてその奥さん達は、現在、福岡市内、長崎、佐世保など5カ所の「日本刺繍」教室で50人ほどの生徒を教えながら、相撲の化粧まわしや山笠など、祭りの飾り幕、その他一般的な物に刺繍をしています。
「日本刺繍」の繍技は、200〜300種類。刺繍の仕事は糸染めから始まり、図案によって糸の色と太さを決めて刺繍をしていきます。針も用途によって数種類を使い分けます。 幾重さんは、刺繍一筋が大半の職人の世界では異色の存在。1600年以上も続く日本の伝統工芸の火を絶やすことはできないと一念発起。公務員を定年退職後に奥さんが趣味でしていた刺繍を身近に見ることが多くなり、自分にもできそうだと刺し始めたのがきっかけで「日本刺繍」の教授免許を取得。また、幸さんも東京でのサラリーマン生活に限界を感じて帰郷した後、父親に弟子入り。孫への振り袖の刺繍柄
現在では、本場の京都からも仕事が回ってくるほどです。毎日の作業は神経を集中させる細かい作業なのでとても疲れ、1〜2時間おきの休憩は欠かせません。13年前、幾重さんは、幸さんが結婚する時に結納品としてお嫁さんに自分で刺繍した帯を贈りました。現在は、7歳の孫への成人式の振り袖に刺繍をしている最中です。毎年恒例の前原市民まつり「伊都国夢追いフェスタ」で、伊都国女王が身にまとう古代衣装に刺繍されている、平原遺跡で発掘された日本最大の銅鏡「内行花文鏡」の模様も田中さん親子によるものです。「一回きりの人生。こうと思ったら一直線。考えているばかりでは何もできない。」と退職後に始めた刺繍人生。今日も家族で支え合いながら頑張っています。(谷)
化粧回し制作風景 結納に贈った帯の刺繍柄 刺繍針
伝統工芸日本刺繍 光絲会 日本刺繍教室(福岡、長崎、佐世保) 大相撲化粧まわし制作、祭、他手刺繍全般 / 問い合わせ 前原市大字東1555 пEFax324-5544  田中
 


  ギャラリー「浮嶽」 2005年7月2日(土)
 
◎愛しむために
静かな作品だから、骨董品と共存する。ギャラリーにはオーナーの趣味で骨董品が飾られているが、お互いに違和感なく収まっている。ギャラリー「浮嶽」(ふがく)は陶芸家大庭康弘さん(33)=二丈町吉井=の作品展示場。
おおらかな優しさを感じる大振りな日常雑器は大庭さんの人柄そのもの「押し付けないで、受け入れる」作品。土は唐津だが灰釉、黒釉、白磁を穴窯で40時間焼く。炎のかかり具合によりさまざまな色が出てくる、まきで焚く自然な風合いが作品の魅力。花入れは花を生けてないときにも美しく、5客組みの湯飲みセットは不ぞろいだけれど自己主張しない。シンプルで手になじむ食器が得意。
奥さんの奈美子さん(37)がギャラリーを運営している。二人とも愛しまれてきた昔のものが好き。ギャラリーではそんなこだわりの有るものを紹介していきたいということ。7月には17世紀オランダの画家フェルメールのタイル画を20点ほど展示する。タイルにしみじみとした庶民の暮らしを描き出しているのが魅力だという。二丈カントリーのすぐ下にあるギャラリーは鳥が鳴き、さわやかな風が吹き抜ける。ギャラリーを堪能した後、工房のお庭を見学しませんかと勧められた。そこには見事なオープンガーデンがあった。個人の庭とは思えない規模と花の種類。わざわざ見に来る人がいるほどの庭。「父の趣味なので」ということだが、四季折々に咲き乱れる花もぜひ楽しんでほしい。(桂)
二丈町吉井3524 326-6333 10時〜17時 月曜定休
お茶碗2000円〜 鉢6000円〜 花いれ15000円〜
 


  「うみがめ工房」 2005年4月30日(土)
 
◎陶芸で人生の回り道
39歳で脱社長、人生をリセットしたと語る金辰夫さん(53)=二丈町ホキ田。少し人生の回り道をしたいと、小石原に2年間住み込んだ。その後、韓国でも陶芸を学んだ。そこで、お金では買えない人生を発見し、陶芸の道へ進むことを決心した。
 今でも韓国から友人が来たり、韓国へ出かけたりと交流が続いている。両国を比較して思うのは「器は食文化」のあらわれだということ。 器より品数や量でおもてなしする韓国の食文化を表現する食器は白磁が中心。それぞれの料理に合わせて器も楽しむ日本の食文化と大きく違う。この違いを韓国の友人に知ってもらうには料亭に案内するのが一番という。
 作品には韓国の土を使うことも多い。土が色を出すので釉薬との組み合わせで色が変化し萩焼のようなピンク色や白になる。その他、海がめ工房の特徴的な作品は金彩焼締。金採とは炎の加減で偶然に出る金色で「火色がついた」と表現される。金さんは火色をつけるには方程式があるはずだと研究を続けてきた。様々な要因を丁寧に研究した結果、やっと火色をつけられるようになり、「金採焼締」と名付けた。
 3年ほど前、TV番組の取材で工房に元シブがき隊の布川敏和さんが来た時、この「金採焼締」をプレゼントした。陶芸好きの布川さんは2年前それを持って「徹子の部屋」に出演したという。「こだわりを極めたい」思いが強い。だから、自分の窯で自分の個性を出す工夫を重ねる。陶芸にも苦労はあるが、ストレスが無い。ほっと一息つくとき見る海は最高で、海の見える工房を選んだ金さんの最も贅沢な瞬間だ。贅沢はもうひとつ、料理用の薪の石窯を作ったこと。陶芸教室の生徒さんと楽しむことが多いが、低温でじっくりと焼いたパンやピザ、鳥のローストは好評だと言う。陶芸は技術ではなく、人間性で味がでると言う金さん。人生の回り道をした余裕がここにある。(桂)
二丈町ホキ田781 326-6166
△陶芸教室 月4回5000円(粘土無料) 金曜13〜16時・土曜9〜12時/13時〜16時
フリーカップ1500円〜  茶碗700円〜  金採焼締2700円〜
 


 ネックレスにはロマンがいっぱい 2005年4月9日(土)
 
◎欠片(砂浜に流れ着いた、陶器のかけら)
革ジャンにダンガリーシャツ、胸元に自作の陶辺ネックレスがよくお似合いなのは大黒窯の齊藤大さん(73)=西区今津=。年齢をお聞きして驚いた。見た目も雰囲気も年齢を感じさせない若さがある。
理由はたくさんの友人のおかげとか。志摩町のサンセットライブでは毎年受け付けを担当しているそうで、ライブで知り合った老若男女の友人が各地から大黒釜に遊びに来てくれるという。取材中もたくさんの方から声がかかる。
 陶芸を始めたのは定年後で、「自由にやりたいから自己流」。好奇心が旺盛で楽天的なので、趣味は興味の湧くままに陶器からトンボ玉、貝のアクセサリーに移り、海で拾った欠片でネックレスを作るようになったという。海岸に打ち寄せられた陶片は様々な模様で、波に洗われて丸みを帯び、古びた優しさをかもし出す。どこかでだれかが使った陶器に、考古学好きの斉藤さんは「ロマンを感じて」ネックレスを作っている。トンボ玉はステンレス棒に溶かした色ガラスを巻きつけて、バーミキュライトの中で自然冷却したもの。企業秘密の粉を使うことで、化学変化が起こり、色と色の境に細い線が出るのが特徴。
 トンボ玉は皮ひもに通され、長さ調節ができる結び方になっている。魚釣りのときに使っていた技法で,洋服によって長さが変えられるので、女性に好評だそう。貝殻も縦に切断したり、横に切断したりすると面白い造詣になる。貝には真珠が似合うと小さな真珠と組み合わせて繊細な海のアクセサリーに仕上げる。最近は薄いベージュ色や白色の糸島の貝もアクセサリーに変身している。毎年7月には前原市南風台の「ギャラリー苑田」で個展を開催。「定年後、物つくりに転じて、たくさんの出会いに恵まれて幸せになりました」。生き方が自然体で前向きでフレンドリー、これが作品のユニークさの秘密なのかもしれない。(桂)
問い合わせ806-2149  △作品販売店:「サンセット」西区西浦809-2937、「冶七のクリームパン」西区今宿806-4229、「ハレアカラ」中央区大名738-2004、「S/trip」中央区大名724-8089
 


 木のクラフトギャラリー「樹創庵」 2005年3月19日(土)
 
◎くつろいで作品を楽しむ空間を
前原市本の「芸術村」に工房を持つ木工作家3人の展示スペース「木のクラフトギャラリー樹創庵」が、昨年7月、同じ「芸術村」内にオープンした。「芸術村」は鶏舎だった建物に工房などが30近く入居する山中のアトリエだ。
 一番の若手、工房「雲」の小野寺幸裕さん(30)は主に食器類を手がける。木工ろくろでひいた作品は柔らかいフォルムと軽さが特徴。中性洗剤で普通に洗えるとあって気軽に使える。「使いやすいものを提供したい。普段にどんどん使って」と語り、修理や注文制作にも応じるとのこと。
 工房「木の香(きのこ)」の西茂さんはイヤリングやブレスレットなどのアクセサリー、カラトリー、照明具などを制作する。自由自在に彫りだす有機的な造形が魅力。今後は「木目を生かしたデザインを」と、そのモチーフは広がる。
 木工歴25年以上という大ベテラン、最年長の和・きたむらさんの作品は、テーブルやベンチ、照明具といった大物。木工の世界に入ったのは数寄屋大工だった父親の影響という。「自然のままの形を生かしたい。人のしていないことを」と抱負を語る。

フリーカップ/作:小野寺幸裕

ダイニングテーブル/作:和・きたむら

スプーン/作:西茂
 同素材を扱うが、年代、作品の方向性、使用木材の種類や部位などがそれぞれ違う。「だからけんかもせずうまくいっているのかも」。「3人で展示をすると刺激にもなり学ぶことが多い。訪れた人がくつろいで楽しめる空間になれば」。三人三様で作品の幅が広がる常設展に加え、次回の企画展も楽しみだ。(甲)
前原市本913芸術村内 323-5606(小野寺)。営業時間10-18時。不定休。事前に確認を。おおよその価格:椀3000円〜、照明具10000円〜、テーブル70000円〜。樹創庵URL:http://www.geocities.jp/jyusoan/
 


 SPACE ふらここ 2005年2月26日(土)
 
◎「贅沢な時間を共有しませんか?」
志摩町でギャラリー「ふらここ」を開いたのは、可也山に魅せられたから。「ふらここ」を開店して10年経ちましたが、毎日お客様に楽しませていただいてますとおっしゃる十川陽子さん(74)=志摩町師吉=は、赤いセーターがお似合いのギャラリーオーナー。
 ギャラリー経営の楽しみは「作品との会話」と色々な「お客様との会話」。70歳を過ぎて、新しい出会いがあるギャラリーの仕事は「贅沢な時間をいただいているよう」で、ますます楽しくなってきたそうです。
 転勤族として全国を転々とした後、北九州に住んでいた1990年に「志摩の五月」に来て志摩町を気に入り、娘の恵美さんと二人でギャラリーを開くことを決めたそうです。芸術品は見るだけでも開放感や心の潤いがあるものですが、都会では店をでたとたんに刺激がいっぱいで、せっかく来てくださったお客様への感性の刺激が持続できない。でも志摩町は景色も芸術なのがすばらしい。景色だけでも楽しみに来て欲しいほどだそうです。
 恵美さんがSAORIという織物を習っていたそうで、扱う作品は織物が多いようです。誰でも織れる、仕立てられるというSAORIやモダンな博多織、タイシルクやキリムなど様々な作家の個展が月替りで開かれています。常設の陶芸や書など、作家さんとのふれあいも楽しみの一つだそうです。
「お客様とも一つ一つの作品のエピソードを共有したい」。作品に託された思いが、思い出になり、使うたびに甦るというのは、日常生活の小さな贅沢です。そんな楽しみを明日へのエネルギーにして欲しいそうです。「ふらここで贅沢な時間を共有しませんか?」(桂)
志摩町師吉509-2 327-1927 水曜定休(個展会期中は無休)11時〜18時
*作品展 (現在確認中)
 


 手放したくなくなる器を「土丸窯(つちまるがま)」 2005年2月5日(土)
 
◎「完成した形の端にふっと抜ける感覚」
志摩町桜井「さわや土工房」の横尾純さんに5年半師事し、昨年独立した土丸窯の天祐輔さん(26)を訪ねた。昨年暮れに前原市の旬菜酎房「屯(たむろ)」で初個展を開催、今月から自宅の一室を展示スペースに展示販売を始める若きクリエイターだ。
天祐輔(てんゆうすけ)さん 器を手に「あらっ」と思うのは軽さ。見た目より随分軽い。そして飲み口のゆらぎ感。飲み口のゆらゆらとした感じが心地よい。完成した美しさがふっと抜ける。尋ねると、「自然な感じにしたい。カチッとしすぎていると落ち着かない、落ち着くような器を造りたい」と言う。「手に持った時、放したくなくなるような器」が目標だ。「親方」と呼ぶ横尾さんとの出会いは、小学2年生のころだった。最大径約60cmの花器転校してきた横尾さんの息子と友だちになり、「こういう(陶芸の)世界があることを知った」。そして高校卒業と同時に弟子入りの道を選ぶ。唐津の土で造る作品は、コーヒーカップ、湯飲みなどの生活雑器から大型花器、オブジェまで。釉薬は灰釉を用いて黒、茶、緑色などを出す。灰釉は市販品の他に地元の雑木を焼いた自然灰から作り、灰釉作りの一工程「灰汁抜き」の具合で焼き上がりの色や表情が変わる。「灰汁抜きが少ない時、肌は黒っぽく火の表情がよく出るようだ」「表情の出かたや釉薬の変化などの発見が面白さのひとつ」と真剣な眼差しが語る。以前納屋だったという工房に恐竜の骨をかたどったオブジェがあった。恐竜が好きという天さんの、器とは違った魅力のオブジェだ。器以外のモノも造りたいと語る彼に少年の純粋さとまだまだ面白くなる可能性を見た。(甲)
志摩町桜井5367-1。327-0698。携帯090-8416-4044。昭和バス「井牟田」バス停から徒歩1分。ビアマグ1800円、湯飲み2000円など。展示スペースの営業日時などはお問い合わせ下さい。
 


 アメリカ仕込みの陶芸家「遊楽窯」 2005年1月15日(土)
 
◎「光を吸収する黒い器が好き」
大熊康弘さん(35)=前原市加布里=の黒と白の雑器類は、伝統とモダンをMIXした感じが特徴。それもそのはず、大熊さんの陶芸はアメリカ仕込み。
 心理学、社会学を勉強するためにアメリカに留学。一般教養に陶芸の授業があり、陶芸を体験してとりこになった。先生はアメリカ人だが、日本の京都で修行した方。アメリカでアメリカ人の先生から、日本人の大熊さんが日本の陶芸を学ぶという不思議なシュチエーション。アメリカの地で自分の知らない日本の魅力を知ることは、不思議で新鮮な感覚だったそう。大学院は美術学部陶芸科を終了し、しばらく芸術施設のアシスタントをして帰国。
 前原市本に遊楽窯を開いて7年半。和洋折衷でデザイン性の高い陶器を創作する。黒い粘土は割れやすく扱いにくいが、磁器を作っていたテクニックを使い、薄く、軽い食器に仕上げる。手に取ったときしっくりする「作者と握手する形」にこだわる。抽象的な模様が好きで、黒に白の粘土を塗りつけたり、真ん中を均一に掘るよう工夫した彫刻刀で模様を彫ったりする。作風はいろいろで、焼き締めでグラデーションを作った作品もある。楽しさが創作の原点。粘土と遊ぶように、陶芸を楽しむことで、いつまでも広がりのある作風でいたいと遊楽窯と命名した。クイーンズヒルゴルフ場裏側にある遊楽窯は元鶏舎を利用した工房で、他にも20人ほどのクリエーターが集う芸術家村になっている。(桂)
前原市本913RSミサカ内 324-6805工房で作品販売していますが、来店前に電話してください。木・金は陶芸教室開催。
 







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