糸島市のこれからの図書館についての公開質問状 「回 答 文 書」

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さとう俊郎氏の回答文書

質問1への回答
 まず、大きな視点から糸島の問題を指摘するならば、現在まで、あまりにも教育をおろそかにして、人材を育ててこなかったことが最大問題だと思います。「人を育てない地域は荒廃する」という言葉がありますが、まさに、従来型の公共投資や、利便性追及の施設整備等に税金が投入され、教育、文化、環境といった次世代資産への投資がなされてこなかった事が大きな問題です。
 そこで、糸島市の図書館の整備も、この視点から、全国レベル、あるいは福岡県下でも立ち遅れた状況にあると認識します。
 高齢社会の問題は、様々な側面がありますが、人生の最後まで社会と接点を持ち、「人」として豊かな老後を送る事が重要で、そのために図書館が果たす役割は極めて大きいと思います。これから多岐に渡るライフスタイルが展開される中で、図書館は従来のお役所の延長のような「管理された本の倉庫」ではなく、知性の地域ラウンジとして、気軽に立寄ができて、常に中心となる「人」がいて、「本」を中心とした活動が行われ、好奇心を満たしてくれる、そんな存在であってほしいと願っています。高齢者の問題は、移動の問題と直結します。したがって可能な限り、図書館が高齢者の側まで出かけていく、それが可能なシステムを作るべきだと思います。移動図書館の整備などが、その対策の一つかもしれません。また、総てが「公」で行うのではなく、市民の方々との協働が不可欠です。
 私は、デザインという仕事を通して「ユニバーサルデザイン」の概念を理解しているつもりです。感覚的障がい者、あるいは身体的障がい者の方々が、文字を通した文化に接する機会は、行政が保障すべきだと思います。実は、障がい者の利便性を考えて、様々な既存の環境を再検討する事は、健常者の視点でしか見ていない社会の再検討でもあることは、常々感じている所です。つまり、ハンディキャップの方々を考慮した図書館づくりを考える事は、従来の図書館のあり方を再検証することにも繋がります。図書館基本計画の策定にあたって、高齢者、あるいはハンディキャップの方々の支店を取り入れる事は、不可欠です。

質問2への回答
 現在の図書館は「図書館ではなく、図書室」といった評価を、多くの市民の方々からお聞きします。確かに、同規模(旧前原市)の他の自治体と比較しても、はるかに整備が遅れている事は明らかです。整備が遅れたのは、必要性を叫ぶ市民の声が行政に反映されなかったのか、あるいは、行政の文化教育に対する重要度が低かったのか、わかりませんが。
 今後、場当たり的に予算が限られたからこれだけの図書館しかできなかった、というのではなく、中長期に渡る整備計画を作り、年度毎に整備を行うことが重要です。また、整備にあたっては新規の「箱もの」は不要だと思います。すでに、使用していない公共施設、あるいは立地の良い民間施設等があり、それらの有効利用を考え、再生して使用する事が循環型、環境共生型図書館のあり方だと思います。

質問3への回答
 合併後は、早々に新しい糸島市のマスタープランを作成しなければなりませんが、その中で図書館整備は、極めて重要な施策の一つだと考えています。
 まず、糸島市全域における図書館整備(ハード、ソフトを含めて)の基本構想を市民参加で作るべきだと考えます。その際、最も重要なのは、財政が厳しい中で、いかに市民の方々の協力を得ながら、段階的な整備が可能か、つまり、現実的な整備戦略を立てるかだと思います。
 これまでの行政の姿勢では、計画はすばらしいが、実行に移されないケースが多々ありました。形式的な審議会の様な会議ではなく、十分に図書館に関する経験、知識を持たれる市民の方々に重要な役割を担っていただき、ワークショップ方式で、行政職員と一体と成った現実的な基本構想を策定すべきだと考えています。

質問4への回答
 新市発足の初年度に、図書館開設に向けた準備室を立ち上げ、その準備室が中心となって基本構想を策定すべきだと思います。その際、正規職員を配置し、可能ならば、立ち上げ当初から、新図書館、館長予定者が実務に参加することが望ましいと考えています。

質問5への回答
 早急に可能なのは、前原(既存)、二丈(計画)、志摩(これから計画)の3館体制を作る事だと思います。当然、この3館の役割分担、あるいはさらに将来の展開を基本構想で位置づけなければなりません。
 志摩は、周辺の既存施設の再活用により、例えば、芸術、文化関係に特徴をもった図書館などを、九州大学のユーザーサイエンスの先生方、あるいは芸術工学院の先生方の協力を得ながら、進める事が可能だと思います。

質問6への回答
 移動図書館は、病院の世界の往診のようなもので、新市の面積が広がり、財政が厳しい中、また早急な図書館整備が難しい現状では、極めて有効な手段だと考えています。その運営には正規職員が必要です。

質問7への回答
 図書館の運営にあたって、専門職の正規職員の配置が極めて重要であると認識しています。また、全国の水準と比べても糸島市における正規職員の配置が不十分であるとの認識があります。合併による行政事務の効率化、あるいは財政状況から、職員の総数を増やす事は不可能ですが、優先順位をつけて、行政組織の再編や職員の適正配置により、十分に図書館に配置する正規職員を確保することが可能だと思います。また、人事に関して職員の専門性、あるいは将来の希望などを的確に把握して図書館業務に配属するなど、むしろ職員の「やるき」や適正を最大に活かす事が極めて重要であり、この点がこれまでの行政でもっとも、おろそかにされてきた点だと思います。

質問8への回答
 基本的に地方交付税における学校教育予算措置が極めて低いとの指摘が、旧前原市、志摩町、二丈町の教育白書の中でも指摘されています。
 添付資料、福岡県内学校図書館図書購入費(予算措置)における旧1市2町の率の低さは極めて遺憾なことだと思います。したがって、早急に予算措置の現状を把握して、新年度からでも、交付税を本来の目的に100%使う措置が必要だと認識しています。
 博物館、公民館、図書館など、謝意教育的側面が大きい施設において、その所轄をどのようにすべきか(社会教育、あるいは市長直轄など)を検討し、学校図書館は。全体の図書館整備基本計画と連携しつつも、別の整備計画(構想、基本計画)を立てるべきだと思います。また、学校図書館職員の臨時職員から嘱託への切り替えも必要であると思います。
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